ひとりも見捨てないことを、あきらめない

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変化と対応 第7回「変域のあるグラフ」

教科書のページ:p110~p111

生徒に伝える評価の尺度:
1)p110のグラフの書き方を理解すること。また、次のアイウ、
 ア、比例定数が、プラスか、マイナスか
 イ、グラフが、右上がりか、右下がりか、
 ウ、表にしたときに、y の値が増加するか、減少するか
の3つのことについて、どのような関係があるのかを3人の人に説明してサインをもらうこと。
2)問5や、練習問題の[1]の、変域のあるグラフについて、「はみだしたところを点線で書く」ことを守って正しく書くこと。

 予想される生徒の反応:

 原点を通る比例のグラフの書き方を学習する。「原点と他の1点を決めて、グラフを書く」ことを、教科書でも標準的な書き方として紹介しているが、生徒たちは、実際にはそのようには書かない。生徒達は表をつくり、いくつもの点をとり、それらの点を結んでグラフを書こうとする。書こうとするがうまく書けず、「わかんないよ~」「うまく書けないよ~」「なんで答えみたいなグラフになるのか、全然分からない~」となる。
 そこで、比較的数学が得意な生徒に教えてもらことになるが、得意な生徒は、多くの場合、「原点と他の1点」で教えようとする。ところが、分からない生徒は分からないので、「なんでそうなるのか分からない」という疑問を山ほどぶつけることになる。
 この過程で、生徒たちは「具体的な事例」を持ち出すことが多い(そのようにしろ、と指示を出さなくても、どのクラスでもほぼ確実に「具体的な事例」を持ち出す)。つまり、時間とともに水が増えるとか、1個100円のチョコレートをたくさん買うとか(これは離散量だが、生徒たちはそんなことは気にしない)、そのような具体的な事例を持ちだして、x と y が比例の場合には、このような数値になり、このようなグラフになるということを説明していく。
 さて、上に述べたように、本時の「課題」は、関数の式とグラフと表の関係について、理解し説明するというものである。これは単にグラフを書くより、深い内容を持っているが、グラフの書き方を理解すると、比較的簡単に「式、グラフ、表」の関係については、納得できるようである。各自が「他人に説明する」ことで、既習事項の整理が図られる。低位の生徒は、当然、独力では説明できないが、「こういう風に説明するんだよ」というアドバイスをもらい、実際に説明してみることになる。すると、残念ながら用語の使い方や理由のつけかたが間違ってしまう。そこで、教えている生徒から、「こういう理由で、いまの用語の使い方は間違っている」という指導をうけることになる。
 変域のあるグラフについては、さらにレベルが高くなる。まず「変域」というものが何なのか分からない(分からないので教えてもらう)。すると変域は x に関する変域なので、x軸に注目することになる。ところが実線と点線はグラフの上に書いてあるから、普通は x軸には何も書かず、グラフを実線および点線で書くことになる。
 「変域は x に関する変域なので x軸に着目したくなるが、実際には斜めの線の一部が実線、他の部分は点線にする」というところに、論理や理解の飛躍が存在するので、さかんに議論が起こる。


板書の補足:
 グラフを書くときの注意
 ア、変域がなければ、グラフ用紙の端まで書く。
 イ、一番端でズレていると、バツになる!!
 ウ、変域があるときは、はみ出した部分は点線で書く。

教科書:未来へひろがる数学(啓林館)
学年:中学校1年生

 ところで、「変域の範囲内を実線で、範囲外を破線で示す」ということについては、『指導書』には次のような記載があります。

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 私自身は、実線とか点線とかは、「教える側の都合で決めたこと」だと思っているので、そんなにこだわっていません。たとえば、変域内は実線で、その外側は何も書いていなくても、数学的に問題ないと思います。
 その一方で、まあ、一般的には「実線と点線」みたいな文化もありますし、そのようにしておけば、おおむねどこでも通用しますよね。また生徒たちは今回、はじめて「変域のある比例のグラフ」を学習するわけでから、次回の定期テストの際には、この問題をテストに出さなければなりません。だとしたら、「何が正解で、何を不正解とするのか」をあらかじめ子どもに伝えておかなければ不誠実だと思います。
 そこで、指導書にも「原則として」と書いてあることですので、子どもたちにも、そのことをきちんと伝えておこう、そして全員が達成すべき課題として、はっきり明示しておこうというのが、趣旨です。

 

(以下、毎回記載します・・・)

 文部科学省が積極的に推進しようとしてる「アクティブ・ラーニング」では、生徒が自分自身で意欲をもって学習に自主的に取り組み、お互いの意見交換を通じて、生徒が自分自身で学習内容を習得したり、解決方法を見出したりすることを重視しています。また、単に知識・理解だけでなく、「ものごとを最後までやりとげようとする。また、実際に最後までやりとげる」、「自分だけではなく、クラスの友人のことも考えながら、ともに学習をすすめようとする」、「他者を助けることを尊び、実際に協力しながら他者を助けていく」などを重視しています。

 さらに、生徒が自分自身で自分の到達度を確認・評価し、自分自身の向上のために役立てていくことが求められます。このため、生徒に示す評価の尺度は、生徒自身が理解できるような言葉でなければなりません。

 冒頭の学習内容において、もしもアクティブラーニングを実施するとしたら、どのような評価の尺度を与えるのがよいか、また、その際に予想される生徒の反応はどのようなものかについて、記載しています。「実際の授業」とは、授業の進め方などは異なる場合があります。また、「常にこのような形で授業をしている」わけではありませんので、御了承下さい。