ひとりも見捨てないことを、あきらめない

学校教育、社会教育、数学、技術家庭科、Youtube、EdTech、ICT、プログラミング、その他

「ひとりのこらず家庭学習をしよう」を、毎日継続する

 学級経営と学習活動の両方に関係する内容です。

 それぞれの学校で次のような形で学習課題を与え、生徒に家庭学習の習慣を身につけてもらおうとすることがあると思います。

課題の例:

  • その週にどんなことを学習するのか、長くても30分以内に終わるような課題を毎日あたえる。
  • 専用のノートを生徒が用意し、各自が家庭で課題に取り組み、毎朝提出する。
  • 教師がそのノートを点検し、きちんと課題をやっているかどうかを確認し、スタンプ等を押して夕方までに返却する。

 

 本校でも上のような課題を与えています。実施にあたっては、学年ごとに、多少細かいルールも付け加えています。また、年度によっても少しずつやり方は異なります。たとえば、国語と英語だけで実施したり、国数英の3教科だったり、国社数理英の5教科だったり、その他、こまかいルールは少しずつ違いますが、おおむね上の「例」のような形で実施しています。この取り組みの名称を、「基礎学習」と呼んでいます。

 私が担任しているクラスでも他のクラスと同じように実施しています。実施するにあたって『学び合い』の考え方を使っています。その方が、内容も充実しますし、生徒の人間的な成長にもつながります。具体的には、次のようなローカルルールを追加しています。

高瀬が担任しているクラスでのやり方:

  • ひとりも見捨てず、全員が提出することをめざす。
  • 全員が提出できた日には、「連続日数」をひとつ増やす(連続日数を示すカウンタが教室にある)。
  • 提出できなかった日は、「連続日数」をゼロにもどす。
  • 提出できなかった人がいたら、帰りの会までの時間は、カウンターの近くにその人の名前が表示される。
  • 提出できたか、できなかったか、についてはきちんとした基準を設ける。

「提出できた」の基準:

  • ノートの表紙に「基礎学習ノート」とマジックペンで大書し、自分のクラスと自分の名前が書いてあるノートを使用する。ルーズリーフやプリントをそのまま提出することは不可。ノートを自宅に忘れてきて提出できないときは、忘れ物扱いとする。
  • ノートは自宅で学習し、朝、提出することを原則とする。これを守らないと、先生(=わたし)に「ちゃんと出しなさい」と叱られる。ただし、何らかのやむを得ない場合で、当日、登校してからあわてて実施することもありうるので、休み時間等を利用することも認める。しかし原則を逸脱していることには違いないので、必ず叱られる。
  • 課題のプリントをノートに貼って学習することがあるが、このプリントがなくなっり、汚れてしまって自宅で学習できない場合には、翌日の朝、先生に予備のプリントをもらったり、友だちのプリントを見て学習したりすることは、上の「やむを得ない場合」にあたると考える。ただし、この場合も原則を逸脱しているので、必ず叱られる。
  • 前日の「帰りの会」に何らかの理由で欠席した場合(かぜをひいて休んだ、午後から早退してノートを受け取れなかった。部活の大会等で出かけていた)には、翌日の「基礎学習」は免除するが、もちろん提出してもかまわない。免除された場合には「忘れ物」あつかいにしない。

 

 実施にあたってもっとも大切なことは、「ひとりも見捨てない」ことです。私は学級の生徒たちに、

  1. みんながそれぞれ家庭で少しずつでも学習する習慣を身につけてもらいたい。
  2. そのために、お互いに励まし合ったり、工夫したりして、ひとりも見捨てず、全員が提出できるようにしてもらいたい。
  3. 「ひとり見捨てず」という部分をみんなで確認できるように「連続日数」というやり方をしているので、できれば日数を増やすように努力してもらいたい。
  4. 先生の立場としては、ルールにしたがって淡々とチェックするが、できれば朝のうちに全員が提出すると仕事がとても楽になるのでありがたい。

ということを伝えて、あとは、淡々と仕事をします。

 1学期は、2日連続すると3日目に誰かが忘れるということが続きます。誰かが忘れるとその人のネームプレートか日数カウンターのところに表示されるので、いやでも誰が忘れたのかが分かります。ただし、最初はこのような名前はボロボロ出ますので、生徒はあまり気にしませんし、私も「叱る」けれど「怒りません」。

 なお、毎日、忘れてくるような「つわもの」がいる場合には、たとえば学校で担任がノートを保管し、朝、一緒に1行でも2行でも勉強するなどの方法が必要になるかも知れません。ただし、この役目も、次第に担任から生徒に移行させていきます。

 連続日数が5日を超えると、忘れ物をするのが辛くなります。「先生・・・ノートを忘れちゃったけど、どうすればいいだろう」「あなたはどうしたいのかな?」「みんなにあやまりたいんだけど、どうすればいいかわからない」「じゃあ、帰りの会で、みんなにゴメンナサイを言ってみたらどうだろうか。みんな許してくれると思うよ」

 このようにして「懺悔」の期間がやってきます。ただし、これは強制ではありません。なかには「申し訳ない」と言って涙を流す生徒もいますが、反対に謝らなくても平気な生徒もいます。そこで「謝る生徒」と「謝らない生徒」が両方出てきた段階で、学級全体に次のように投げかけます(学級全体に、というところがポイント)。

 「◯◯くんが基礎学習を忘れてきたときには、◯◯くんは自分から謝りたいと言ってきたので、みんなにゴメンナサイを言ったけれど、△△くんからはそのような申し出がなかったから、とくにゴメンナサイは言っていない。わたしとしては、基礎学習をきちんと家でやってくれれば、ゴメンナサイを言っても言わなくてもどっちでもいいんだけど、キミたちとしては、ゴメンナサイは必要かな?」

 すると、「ゴメンナサイ」は言わなくてもいいよ。という声が大勢を占めるので、「じゃあ、今後はここに名前を貼るだけでゴメンナサイは無し、でもいいかな?」とクラス全体に確認します。このようにして、「忘れ物をすること自体は、それほど深刻な罪ではない」ということと、「事実を確認する意味で名前を貼ることはクラスのルールとして認められる」ということの2つを確認します。

 さて、連続日数は残念ながら5日から7日程度で、またゼロに戻ることが繰り返されます。これは、30人も生徒がいたら当然ですし、仕方のないことです。全員がどんなに注意しても、体調が悪かったり、うっかりノートを忘れたりということは、当然起こりえます。その一方で、そろそろノートが1冊終了する時期なので、新しいノートになる生徒も現れます。そういう時期をねらって、「みんな見てごらん、◯◯さんは2冊めの新しいノートになったよ。ピカピカの新しいノートは、やっぱりなんとなく気持ちがいいなあ」とクラス全体に伝えます。すると、多少いたずらっぽい生徒(それは、同時に独創性があり、うまくルールを運用できる生徒でもあります)からこんな申し出があります。

 「先生、基礎学習のノートって、他のノートを使ったらダメなんですか」、「わたしはいつも言っているけれど、基礎学習のノートというのは、表紙に基礎学習と大きく書いてあって、自分の名前もしっかり書いてあって、その日の課題がきちんと書いてあるノートのことだよ」、「じゃあ、別の教科のノートの表紙を書き換えて使ってもいいんですか」、「うん。もしもその教科でそのノートをもう使わないのであれば、余ったところを基礎学習に使うのは、地球環境のためにも良いんじゃないかなあ」、「わかりました」

 「先生、基礎学習のノートって、他の人からもらってもいいんですか」、「ほかの人からもらうというのはどういうこと?」、「ウチのクラスには、新しいノートを学校に持ってきている人がいるんですよ。その人からノートをもらって基礎学習のノートにしてもいいんですか」、「わたしはいつも言っているけれど、基礎学習のノートというのは、表紙に基礎学習と大きく書いてあって、自分の名前もしっかり書いてあって、その日の課題がきちんと書いてあるノートであれば大丈夫だよ」、「わかりました」

 このような方法を生徒が知ると、誰かがノートを忘れても、お互いに知恵を出し合って解決しはじめるので、連続日数はグングン延び始めます。ただし、私自身は、「基礎学習は、家庭でやってくることが基本であり、学校でやったりすることは、ズルい方法である」ということを訴え続けます。たとえば、次のような言い方をします。

 「ごらんのとおり、基礎学習ノートの連続提出日数は、◯◯日まで増えている。ところが、皆さんの様子をみていると、学校に来てからやったり、休み時間にやったりしている人が居るような気がする。ルールとしては認めているけれど、そういうやり方は本当は、やむを得ない場合に限るべきだと思う。私が心配しているのは、そういう人が、『ちゃんとやらなくても、適当にごまかせば、ルールはなんとかクリアできる』という習慣になってしまうことだ。もちろん、わたしは、そういう人には毎日のように、ちゃんと家でやりなさいと指導している。しかし、なかなかゼロにならない。皆さんには、こういう人を見捨てなでいほしい。クラス全体で、お互いに声をかけあって、自宅で学習しようと励まし合ってもらえないだろうか。

 

 今年の学級担任のクラスでは、まもなく「連続日数」が50日に達します。

 また最近では、全員が「普段使っている基礎学習のノート」を提出し、全員が家庭で学習し、全員が朝のうちにノートを提出する、というようになっています。

 私は、全員のノートにスタンプを押し、カウンターをひとつ増やすということだけをやっています。