ひとりも見捨てないことを、あきらめない

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アクティブ・ラーニングでの授業準備 「評価規準と評価方法を決めよう」

 最近は、初めてアクティブ・ラーニングや『学び合い』をやろうとしている先生のことを考えて、ブログを書いています。今日のブログも「初めてアクティブ・ラーニングに挑戦する先生が、評価規準と評価方法に悩んでいたら」という観点で書こうと思います。ここでの「評価規準と評価方法」は、単元全体を見渡したときの評価基準と評価方法です。

 

国立教育政策研究所の評価規準

 評価規準については、国立教育政策研究所が平成23年11月に発行した『評価規準の作成,評価方法等の工夫改善 のための参考資料』がインターネット上で公開されています。

> TOP > 各部・センター案内 > 教育課程研究センター > 指導資料・事例集
> http://www.nier.go.jp/kaihatsu/shidousiryou.html
> 
数学(PDF:3.0MB)
> http://www.nier.go.jp/kaihatsu/hyouka/chuu/03_chu_sugaku.pdf

 この資料の「第2編 評価規準に盛り込むべき事項等」に、各学年と各単元の評価規準が記載されています。また「第3編 評価に関する事例」では、4つの事例について評価方法も含めて記載があります。「二次方程式(第3学年)」では、単元の指導と評価の計画から総括までについて、「資料の散らばりと代表値(第1学年)」では、レポートによる評価について、「平行と多角形の角(第2学年)」では、数学的な見方や考え方の評価について、「一次関数(第2学年)」では、表現に関わる評価について、それぞれ詳しく解説されています。

 問題は、これらの評価を毎日実施することが、難しいということです。上の資料では、評価の方法について非常に詳しくていねいに書かれているのですが、現実には、教師ひとりですべての生徒を評価し、集計し、結果を出し、その結果を生徒に還元することは、おそらくできないだろうと思います。

 

生き生きとした生徒の言葉や行動で、評価を実施しよう

 上のような評価の方法には、いくつかの問題点があります。ひとつは、生徒が黙っていることです。プリントやアンケートや小テストに生徒が記入しているときには、生徒はじっと黙って座っています。黙って座っている生徒が何を考えているのかを知るのは、とても困難です。生徒が活発に活動していれば、生徒がどこまで進んでいるのか、生徒が何につまづいているのかが分かります。

 ふたつ目には、用紙等を回収し、教師が評価するということです。もしも担当しているクラスが4クラスあったとしたら、教師ひとりに対して生徒は120人以上になります。これをひとりの先生が全部担当するのは、とても大変です。評価する人がもっと多ければ、ひとりあたりの評価の作業は少なくなります。

 3つ目は、評価が生徒のところに戻るのに時間がかかるということです。定期テストであれば、ミスのないようにしっかり採点して1週間後に返却ということもありうると思います。しかし、日々の授業での生徒の活動に対して、その翌日に評価を伝えるのでは、自分がどんな活動をしていたのかを生徒は忘れてしまいます。また、次の授業では次の課題に取り組んでいますから、前の授業の評価を受け取っても、やりなおしたり、もう一度練習することができません。その場で評価し、その場でフィードバックできれば、生徒はすぐにやり直したり、繰り返し練習をしたりできます。

 これらを一度に解決するためには、どのように評価すべきかを、生徒が理解できる言葉で記述し、授業の最初に生徒に示し、生徒自身がお互いに評価して、その場でお互いに伝え合い、必要であれば修正したり練習したりを自分たちで行う、という方法を用います。そのためまず、評価規準を生徒が理解できる文章に書き換えなければなりません。

 

評価規準を、生徒が理解できる言葉に書き換える

 たとえば、第2学年の「C関数」のうち、【一次関数の関係】の評価規準の設定例として、『評価規準の作成,評価方法等の工夫改善 のための参考資料』の34ページでは、次のように示されています。これらを書き換えて、生徒がその場で理解し、お互いに評価し合えるようにします。

 

数学への閱心·意欲·態度

  • 【元の文章】一次関数に関心をもち、具体的な事象の中から一次関数として捉えられる二つの数量を見いだしたり、その関係を式で表したりしようとしている。
  • 【書き換えた文章】一次関数に関する問題を自分で解こうとし、解けない場合には他の生徒に助けを求め、または他の生徒を助けてともに問題が解けるように努力し、ひとりも見捨てずに全員が目標達成できるように課題に取り組む。

数学的な見方や考え方

  • 【元の文章】具体的な事象の中にある二つの数量の関係を、変化や対応の様子に着目して調べ、一次関数として捉えられる二つの数量を見いだすことができる。
  • 【書き換えた文章】教科書の具体的な事象を用いた問題で、ともなって変わる二つの数量を発見し、その関係を式で表し、その式を他の生徒に見せ、正しければサインをもらう。

数学的な技能

  • 【元の文章】一次関数の関係を式で表すことができる。一次関数の関係を表す式に数を代入し,対応する値を求めることができる。
  • 【書き換えた文章】一次関数の関係を式で表したり、数を代入して値を求めたりする問題を正しく解き、丸付けをする。また、そのなかで教師があらかじめ指定した問題について、なぜそのような答えになるかの説明を考え、他の生徒に説明し、納得してもらえたらサインをもらう。

数量や図形などについての知識・理解

  • 【元の文章】一次関数の意味を理解している。
  • 【書き換えた文章】「一次関数とは何か」について200字以内で説明の文章を書き、その文章を他の生徒に見せて、納得してもらったらサインをもらう。

 

授業における評価と、定期テスト等を用いた評価

 ここでは具体的な教科書のページ数や問題番号が書いてありませんが、それぞれの学校では具体的に教科書のページや問題番号もきちんと示して、その授業で何をすべきか、そして何が達成できればいいのかが、明確にわかるようにします。

 また、教師は、教室全体の様子を観察し、それぞれの生徒の行動や発言を見ながら、個々の生徒の理解度や到達度、意欲などについて評価していきます。

 さらに、中間テスト・期末テストなどの定期テストや、単元ごとの小テスト等も用いて、個々の生徒の理解度や到達度について、客観的なデータも集めていきます。なお、小テスト等も「やりっぱなし」ではなく、理解が不十分な点があれば、アクティブ・ラーニングの方法を用いて、もう一度、復習することが望ましいでしょう。