ひとりも見捨てないことを、あきらめない

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「答えのない問題」を、いかに作るか

「これからの時代は、答えのある問題を手早く解くのではなく、仲間と協力しながら答えのない問題に答えを出す能力が求められる」と言われます。いままでの知識注入型の勉強の仕方では、今後の世の中の変化に対応できないとも言われます。

 

でも、逆に考えると「先生という立場の人間が、生徒に対して答えのない問題を与えなければならない」ということになります。そんなことはできるのか、という疑問や不安をもつ先生方もいらっしゃるのではないかと思います。

 

大学で研究し、学生を指導している先生方に聞いてみると、「大学の先生の場合、きちんと研究していれば、問題を立てるというのはスキル的にはできそうな感じかな。って思ったりします」という答えが返ってきました。つまり、大学では、常に最先端のことを研究しているわけですから、答えがないのはアタリマエだというわけです。

 

そうすると問題になるのは、小中学校や高等学校の先生方かなと思います。これには大きく2つの問題があって、

  • 教員を養成する教育系の大学で、どのようにして、学生対してこういうスキルを身につけさせていくか。
  • すでに現場に配属されていて、このようなスキルを伸ばす経験がなかった先生方に、どのようにして「明日からの指導」を担っていただくか。

という問題について考えなければなりません。

 

さて、「答えのない問題を、どのようにして作って、どのように生徒に与えていくのか」が課題ですが、この課題に対するうまい解決方法があるかというと、「そんなものは、あるわけがない」ですね。なにしろ、答えがない問題を作ろうというのですから。

 

もうすこし言うと、「答えのない問題には、いくつかパターンがあって、それぞれのパターンについて、このように問題をつくっていくと、【答えのない問題】をつくることができる」みたいなノウハウにしたがって問題を作るのであれば、やがてそのノウハウは定式化されて世の中に広まり、「こうすれば、【答えのない問題】を解くことができる」みたいな相当にウソっぽい(あるいはパロディとしか思えない)形になってしまうだろうと思います。

 

ノウハウが存在するのは否定しませんが、むしろ大切なことは「答えがひとつに決まらない問題があり、そいう問題に立ち向っていこう」という意欲を育てることではないだろうかと思います。

 

さて、とは言うものの、「答えのない問題なんて、まったく作ったことがない」という先生もいます。このような先生方に、「ためしに、こういうふうにやってみるといいですよ」とオススメするには、何か具体的な方策が必要だろうと思います。

 

私としては、普段の授業のなかでも、このようなことは可能だと思っています。

 

たとえば、たまたまウチのクラスでは、現在「応仁の乱」について学習しています(ちなみに高瀬は人名を覚えるのが苦手なので、歴史はとても苦手です)。ここで、応仁の乱がなぜ起きてしまったのか答えなさい」という問い方だと、教科書や参考書に書いてあることを答えることになります。おそらく、「こういう答え方なら正しいが、こういう答え方では間違いである」という判断基準があるのだろうと思います。つまり、このような問い方は、答えがはじめから存在する問題です。

 

これに対して、応仁の乱がなぜ起きてしまったのかについて、クラスの友達に納得してもらえる説明を考えなさい。実際に説明して、その人が納得してくれたらサインをもらいなさい。サインは、最低3人からもらうようにしなさい」という課題であれば、説明の仕方、話し方は、それぞれ自分なりの説明の仕方があるでしょうし、ひとりひとり違っています。また、説明する相手の理解度によって、どの程度説明すれば納得してもらえるかは異なるでしょう。したがって、この問い方は、「答えがあまりはっきり決まっていない問題」と考えられます。

 

もちろん、「答えのない問題」は、これ以外にも、いろいろな作り方があるでしょうけれども、まず上のような方法で何回か試してみて、生徒がどのように動くか、どのように考えるか、どのように話し合うかをよく観察することがよいと思います。生徒をよく観察すれば、「じゃあ、次はこういうふうに問題を与えてみよう」というアイデアも出てくるだろうと思います。

 

また、教育系の大学で学生に対してスキルを身につけてもらう際にも、大学生が小中高校生と一緒に活動し、小中高校生に「答えのない問題」に挑戦してもらい、小中高校生の様子を大学生が観察することで、スキルは身についてくだろうと思います。

 

まず、最初の「とっかかり」として、上のような方法を試してみてはいかがでしょうか。

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