ひとりも見捨てないことを、あきらめない

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正の数・負の数 第9回「減法」

教科書のページ:

  p25-p27

生徒に伝える評価の尺度:

  • ア、教科書のp25からp27の問題を解いて丸つけし、すべて丸になるようになおしなさい。
  • イ、「正の数・負の数をひくには、符号を変えた数をたせばよい」という文章について、どういう意味なのか説明を考えなさい。友達に説明して2人からサインをもらいなさい。

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予想される生徒の反応:

 今回の授業では、1時間に扱う問題数が20問以上ある。このうち減法の問題は10問である。自分で問題を解くにしろ、友達に教えるにしろ、いままでの数直線等を用いた方法では、時間が足りなくなる。そこで、生徒たちは時間を節約することを考えて、「符号を変えて足す」ということを実施する。
 このことには、いくつかの面が考えられる。
 ひとつ目は、効率化という点である。いままで、理由を考えながらじっくりと取り組んできた計算の方法を、すばやく正確なものに変えていくという作業を、生徒同士が話し合いながら実行する。
 ふたつ目は、「言葉の省略」という点である。生徒同士が教え合う様子をみていると、最初は、「正の数・負の数をひくには、符号を変えた数をたせばよい」という言い方をするか、あるいは、これよりもさらに長い文章を用いて、他の生徒に説明している。しかし、次第に慣れてくると(それは、わずか10分程度の時間である)、「符号を変えて足すんだよ」、「プラスマイナス逆にして足すのっ」と、短い文章に変わっていく。文章が短くなるということは「言わない部分を省略している」ということであるから、その分、理解が進んでいると考えられる。
 みっつ目は、「習うより慣れろ」ということである。生徒の中には、原理原則をきちんと理解して計算方法を習得する生徒もいるが、とにかく答えが出てマルがもらえればそれでいいという生徒もいる。いずれにしても、今日の課題は全員が達成できるように頑張らなければならない。上の「効率化」とも関連するが、「とにかく答えが出ればそれでいいや」という理解の仕方も、この時点では有効と考えられる。同じような計算を繰り返し実施し、次第に原理原則も含めて身についていくと考えられる。
 よっつ目は、おそらく20問を超える問題は、残念ながら全員が完全に達成することは難しいということである。「一生懸命頑張ったけれど、今回は残念ながら全員が達成できなかった」、「では、次回の授業に向けて、自分たちはどうするか?」と考える契機になるということである。
 なお、「全員が、全部、終わらなくても大丈夫なのか」という疑問が残るかもしれない。これは「似たような問題を、次回、また次回と繰り返し取り組んでいくので、ちゃんとこの時間の内容についても理解が深まる」と答えられる。そもそも、一斉授業では生徒は黙って座っているだけだから、誰が理解できていて、誰が分かっていないかすらわからない。そして「たぶん、わからないヤツがいるだろうな」と思いながら、そのことに目をつぶって授業を先にすすめてしまっている可能性がある。

板書の補足:

「正の数・負の数をひくには、符号を変えた数をたせはよい」と大きく書いておく。

教科書:未来へひろがる数学(啓林館)

学年:

中学校1年生

以下、毎回記載します・・・

 文部科学省が積極的に推進しようとしてる「アクティブ・ラーニング」では、生徒が自分自身で意欲をもって学習に自主的に取り組み、お互いの意見交換を通じて、生徒が自分自身で学習内容を習得したり、解決方法を見出したりすることを重視しています。また、単に知識・理解だけでなく、「ものごとを最後までやりとげようとする。また、実際に最後までやりとげる」、「自分だけではなく、クラスの友人のことも考えながら、ともに学習をすすめようとする」、「他者を助けることを尊び、実際に協力しながら他者を助けていく」などを重視しています。

 さらに、生徒が自分自身で自分の到達度を確認・評価し、自分自身の向上のために役立てていくことが求められます。このため、生徒に示す評価の尺度は、生徒自身が理解できるような言葉でなければなりません。

 冒頭の学習内容において、もしもアクティブラーニングを実施するとしたら、どのような評価の尺度を与えるのがよいか、また、その際に予想される生徒の反応はどのようなものかについて、記載しています。「実際の授業」とは、授業の進め方などは異なる場合があります。また、「常にこのような形で授業をしている」わけではありませんので、御了承下さい。