ひとりも見捨てないことを、あきらめない

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ワイワイガヤガヤの原因

 ふと、何年か前の出来事を思い出しましたので、つれづれなるままに書いておきます。その学校はとても大きな学校で、学年が8クラス、3学年で24クラスという大規模校でした。

 同じ学年のクラスは、なるべく同じフロアに配置しようとしても、どうしても離れるクラスがでてきてしまいます。私が担当していた学年は、なんと3か所に分散してしまいました。学年集会などでは、3か所から300名近い生徒が集まってきて、体育館に集合することになります。

 3学期のちょうど今頃の時期だったと思います。学年で何か集まる必要があって、昼食後の5時間目に体育館に集まりました。私は、生徒に資料を提示するために、昼休みから体育館に居て、学年主任と一緒にコンピュータ等の準備をしていました。

 やがて、各クラスの生徒が体育館にやってきたのですが、担任していたクラスと隣のクラスが来ません。主任も心配して「何かあったのかねえ」と言っています。しばらくして隣のクラスの方が来たので聞いてみると、「廊下でザワザワしていて、整列をやり直すことになった。それでもまだニヤニヤしていた人が居たので、残って叱られている」とのことでした。

 少なくとも生命に危険はないらしいので、とりあえず待ちました。クラスの生徒が静かに体育館に来ました。叱られていた生徒も体育館に来ました。生徒たちの様子を見ていても、とくに落ち込んでいるような様子はみられませんでした。

 

 さて前述したとおり、私たちの学年の教室は3か所にわかれています。体育館に移動するとしたらクラスの位置はバラバラですから、どのタイミングで整列し、どのタイミングでスタートするのかを調整しなければなりません。みんなが勝手に動けば、廊下が大混雑になってしまいます。他の学年が授業中の場合もあります。そこで、整列したら黙って移動するというのがルールになっていました。

 ※「軍隊的だ」などと批判しないでいただけるとありがたいです。教室の壁はそれほど防音性に優れていないので、廊下で何十人もの生徒が勝手にしゃべれば、教室内の授業の邪魔になってしまうのです。

 多くの場合には、学級担任が指示を出して整列させます。でも、廊下に並んでも関係ない話をしてたりします。そこで「コラ、黙りなさい」と一喝し、生意気で言うことを聞かない生徒をにらみつけるということになります。

 しかし、私の担任するクラスでは、基本的に担任(=私)は何もしません。並ぶタイミングを確認するのは、学級のリーダーの仕事です。リーダーが忙しければ、サブリーダーが伝令になって動きます。

 教室内ではおしゃべりをしていても、廊下に出れば、ピタリと話がとまります。「話がとまっている」というのは見せかけで、学級内のローカルルールで「廊下に並んで話をしたいときには、ささやくように話をしよう」ということになっていました。

 実は、担任の知らないところでもうひとつルール(翌年、教えてもらった)があって、それは「こわい先生の前では、ささやくように話をするのも、やめて黙る」というルールもあったそうです。

 このような生徒たちでしたので、いままでは特に叱られることもなく「きちんと静かで、いいクラスですね」というお褒め(?)の言葉をいただいていたのですが、何かトラブルがあったのだろうと思って事情を聞いてみました。

 

■ ■ ■ ■ ■

 すると次のようなことが分かりました。

 この日、隣のクラスでは、「学年集会では◯◯◯が必要だから、各自持っていくように」という指示があったのだそうです。ところが実際には◯◯◯は必要ありませんでした。したがって私が担任する学級では、◯◯◯を持っていくという指示は出ていませんでした。

 ところが隣のクラスから◯◯◯が必要だと聞き、いったんは生徒たちは◯◯◯を持って整列したのだそうです。一方、リーダーは本当に◯◯◯が必要なのか、確認のために走りました。その結果、「やっぱり、◯◯◯は必要ないらしい」と連絡してしました。この情報の真偽をめぐって2つのクラスの間で議論があり、結果的に生徒たちは教室に◯◯◯を置くために戻り、再度、廊下に並んだのだそうです。

 この一連の動きを見ていた先生に、「オマエたちは、いつまでワイワイ騒いでいるんだ!」と一喝され整列をしなおしたのだそうです。この過程で、状況がうまく飲み込めずに右往左往していた生徒が、「オマエは、なんで先生の話をちゃんと聞かないんだ!」と叱られて、残されてしまっのだそうです。

 

■ ■ ■ ■ ■

 さて、学年集会が終わって教室に戻りました。どうしようかなあ。どんなふうに、生徒達に話をしようかなあ。多少、考えて、次のように話しました。

 

 「トラブルがあったときに、私が近くに居られなかったのは、申し訳ありませんでした。朝の時点で◯◯◯は使わないヨとはっきり言えばよかったですね。そう言わなくて皆さんを混乱させてしまいました。ごめんなさい。

 さて、何人かに聞きましたが、きちんと静かに整列するのは、今までどおりにできていたようですね。ただ、今回については◯◯◯を持っていくのかどうかというトラブルがあったので、ザワザワしてしまったようですね。

 では、今後はどうするか、ということですね。

 今回のようなトラブルのときに、皆さんだけで話し合っても解決しないと思います。だって、情報が不足しているんだから。

 だから、こういうトラブルのときには、まず、黙る。それから代表が確認をしにいく。もしも持って行かないのなら、隣近所で何冊かずつまとめて、パッと教室に置く。持って行くなら、そのまま持っていく。ということでどうでしょうか。」

 

 このように聞いたとおり、生徒たちも「うん。そうしよう」ということになりました。なお、◯◯◯を持っていく程度のことなら、しばらく待って先生の指示を聞いて、ということになりますが、地震や火事など、生命に危険がある場合には、各自の判断でとにかく逃げなさい、ということも伝えておきました。

 この後、3月末まで、このトラブルに匹敵するようなトラブルは生じませんでした。大きな地震などもありませんでした。でも、まあ、きっと無駄ではなかったんだろうなと思っています。

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