ひとりも見捨てないことを、あきらめない

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「将来、きっと、役に立つ!!」

 私の授業を、校外の方に見ていただくことがあります。そういうときには、ひとつだけの授業ではなく、複数の授業を見ていただくようにアレンジしています。中学校の場合には、ひとりの教員が、ある教科を複数の学級で教えることが多いです。したがって、授業の進め方と、学級の生徒集団としての特徴を、ある程度区別して考えることができると思います(実際には、両者は密接に結びついているので、完全にわけて考えることは難しいと思います)。

 さて、この日は、別々の民間企業に勤務している2名の方に来ていただき、複数の学級での授業を見ていただきました。私は、まだ単元まるごとを学級にプレゼントすることはできないので、その時間の課題を、その時間に達成するという形での『学び合い』アクティブ・ラーニングの授業です。具体的には次のようすすめました。

  1. 本時の課題を記載し、ワークシートにもなるプリントを配布する。
  2. 教科書の該当するページを開くように指示し、実際に開いているか確認する。
  3. 「プリントよりも教科書の方が、ずっと親切に書いてあるから、じっくり読むように」と指示する(この指示は、毎時間、かならず言います)。
  4. 前回の授業で学習した内容と、今回の授業で学習する内容について、口頭で伝える。
  5. 本時の授業で、生徒が達成すべき事項については、黒板に書いておくので読むようと伝える。
  6. 「先生の仕事は、皆さんを教えることだから、もしも分からないことや困っていることがあったら、いつでも呼んでほしい。先生は、すっ飛んでいって、ていねいに教えます」と真剣に伝える(この言葉は、毎時間、かならず言います。でも、リクエストは1単位時間にせいぜい1件、あるかないかです)。
  7. 学習を開始する。「さあ、はじめよう。でも、絶対に、ひとりも見捨ててはダメだよ。最後まで、なんとかして全員が達成できるように、自分のできる努力をしてください。センセイもガンバリマス!」
  8. 学習開始直後に、ワークシートの解答を、生徒が見える位置に置く。
  9. また、学習開始後、数分以内に、上記の「達成すべき事項」の板書を終えるようにする(この達成すべき事項は、学習指導案の「本時の学習に関する評価規準」に相当するものです)。

 お客さまがいらっしゃったということがプラスに働いたのか、生徒たちは、普段よりもさらに頑張って、授業が終了する10分前には全員が課題を達成することができました。お客さまは、生徒が主体的・協働的に学習している様子を、目を丸くしてずっと見ておられました。
 私は、「このままだと、確実に時間が余りそうだ」ということが分かったタイミングで、お客さまに「突然で申し訳ないけれど、今日の授業を見た感想などを、子どもたちに伝えてもらえないだろうか」とお願いしてみました。本日の主題は、そのときのお客さまの言葉です。


 <><>(趣旨を変えない程度に改変しています)<><>

 今日は、本当にすばらしい授業を見させていただいた。そして感動した。タカセ先生が、このような授業をしていることは知っていたのだが、正直なところ高校生なら可能かもしれないけれど、中学校1年生には難しいと思っていた。でも、みなさんは、授業中、ずっと学び合い、助けあって勉強を続けていた。そういうことが可能なんだということを知って、本当に感動している。
 自分は民間企業にいて、たくさんの大人たちと付き合っているけれど、仕事をするときに「自分は、わからない」と言えない大人たちがたくさんいて困っている。仕事が分からなければ、誰かに教えてもらわなければならないけれど、「分からない」と言えない大人がとても多い。皆さんは「分からない」と言って、自分から学ぼうとしている。
 それから、教える側も、ちゃんと教えてくれなくて困っている。ちょっと教えて、相手の人ができないとすぐにあきらめてしまう。それでは、人は育たない。皆さんの勉強の仕方を見ていると、相手の人が分からなくても、あきらめない。やり方を変えたり、言葉を変えたり、何人かで教えたり、ずっとあきらめずに教えつづけている。
 自分は民間企業にいるけれど、皆さんのような人と一緒に仕事がしたい。現在は中学校1年生だけど、早く大人になって自分の会社にも来てほしいと思う。そのぐらい、皆さんの勉強の仕方は素晴らしかったと思う。
 皆さんは、こういう勉強の仕方を、数学の時間だけでやっているのかも知れないけれど、これは、数学以外にも、人生のさまざまな場面で、将来、きっと役にたつと思う。そういう、とてもすばらしい勉強をしていると思う。

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こんな素晴らしいお話を聞かせていただいた生徒たちは、幸せものだと思います。