ひとりも見捨てないことを、あきらめない

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正の数・負の数 第7回「正の数・負の数の加法」

教科書のページ:p21-p22

生徒に伝える評価の尺度:

  • 次の4つの計算が正しいことを説明できるようにしなさい。
  • 3+6=9
  • (-4)+6=2
  • 5+(-6)=-1
  • (-2)+(-6)=-8
  • 実際に2人の人に説明して、自分の説明に納得してもらえたらサインをもらいなさい。クラスの全員がサインを2人ずつもらえるように、お互いに助け合いなさい。

予想される生徒の反応:
 本時であつかう計算は、「評価の尺度」で示した4つだけである。これらの4つの計算を、数直線を用いて検討する。加える数は6と-6の2種類で、6は数直線上を右に進み、-6は数直線上を左に進む。出発点が3、-4、5、-2であるので、それぞれ右に進んだり左に進んだりして、結果が9,2,-1,-8と求められる。

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 生徒は、6と-6とで進む方向が反対になること、しかし進む距離は6で同じであること、この6が6および-6の絶対値に等しいことを「発見」することになっている。しかし実際の授業では、このような反応は起こらない。
 まず、「わかっている生徒」は数直線を用いなくても機械的に答えを出すことができる場合が多い。彼らが数直線を用いるのは「わからない生徒に説明するために、やむを得ず用いる」ためである。したがって、「わかる生徒」と「わからない生徒」が交流しなければ、そもそも数直線を用いる場面が生じないのである。
 つぎに、「わからない生徒」は、何も分からない。つまり「たすって、何?」というところから話が始まる。なぜかというと、分からない生徒にとっては「たすというのは、正の数と正の数をたすこと」であって、「負の数が出てきた瞬間に、なにがなんだかわからなくなる」のである。わかる生徒が「プラスの数とマイナスの数を、たすときはネ」と言われても、「たすってどういうこと?全然わからない」と考えている。「右にすすむこと」は、あくまで右にすすむことであって、「たす」とは全然関係ないことだし、「さっきまで右に進んでいたのに、なぜ急に左に進むんだろう」と考えている。
 この壁を突き崩すのは、分かっている友だちの「ぜったいにあきらめずに、10回でも20回でも、説明を繰り返す忍耐力」である。ひとりの生徒に3人、5人と友だちが集まり、それぞれが同じような説明を何度も繰り返す。その内容は、

  • 3+6=9
  • (-4)+6=2
  • 5+(-6)=-1
  • (-2)+(-6)=-8

この4つだけである。そして、ある瞬間に教室中に響く声で「わかったあああ」と叫ぶことになる。30数人の生徒が全員わかるようになるためには、たっぷり40分が必要である。
 なお、板書の補足にも書いたとおり、「たし算のことを、加法という」という数学的な用語の導入も同時に行う。数学的な用語は、定義がはっきりしていて曖昧な部分が少ないため、数学的な事象を正確にあらわすには都合がよい。しかし、生徒にとっては日常生活で使わない、慣れない用語である。しかし言葉は、使い慣れると意味や用法が自然に身についてくる。数学的な用語についても、順次導入してできるだけ生徒同士の会話の中で多数使うように誘導し、その意味や用法についていつの間にか生徒が身につけていくようにすることが有効と考えられる。


板書の補足:

  • 「たし算のことを、加法といいます」
  • まず、数直線を用いて考えましょう。
  • なれたら、もっとスピードの速い方法を工夫しましょう。

教科書:未来へひろがる数学(啓林館)
学年:中学校1年生

 

(以下、毎回記載します・・・)

 文部科学省が積極的に推進しようとしてる「アクティブ・ラーニング」では、生徒が自分自身で意欲をもって学習に自主的に取り組み、お互いの意見交換を通じて、生徒が自分自身で学習内容を習得したり、解決方法を見出したりすることを重視しています。また、単に知識・理解だけでなく、「ものごとを最後までやりとげようとする。また、実際に最後までやりとげる」、「自分だけではなく、クラスの友人のことも考えながら、ともに学習をすすめようとする」、「他者を助けることを尊び、実際に協力しながら他者を助けていく」などを重視しています。

 さらに、生徒が自分自身で自分の到達度を確認・評価し、自分自身の向上のために役立てていくことが求められます。このため、生徒に示す評価の尺度は、生徒自身が理解できるような言葉でなければなりません。

 冒頭の学習内容において、もしもアクティブラーニングを実施するとしたら、どのような評価の尺度を与えるのがよいか、また、その際に予想される生徒の反応はどのようなものかについて、記載しています。「実際の授業」とは、授業の進め方などは異なる場合があります。また、「常にこのような形で授業をしている」わけではありませんので、御了承下さい。