ひとりも見捨てないことを、あきらめない

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「親なら知っておきたい 学歴の経済学」

西川純先生の最新刊です。
http://www.amazon.co.jp/dp/4313810927
おそらく、相当の衝撃を各界に与えるだろうと思います。
西川先生本人が書いた文章を、そのまま以下に転載します。

まずは、本書の構成についてです。

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 第1章は「「うちの子はとにかく大学へ」は危ない」では、大学は入りやすくなりましたが、ハイリスクの博打になったことを書きます。我々の中には「中卒より高卒、高卒より大卒、同じ高校、大学だったら偏差値が高い方がいい」という単純なモデルがあります。それが誤りであることを示します。

 第2章は「いま「安全な進路先」はあるのか?」では、少子高齢化社会で終身雇用が崩れ即戦力が求められます。そのためには高校3年までにキャリア教育を完成する必要があることを述べます。今の時代、本当のキャリア教育を高校は大学に丸投げし、大学は企業に丸投げしています。それが出来ない時代になったことを示します。

 第3章は「トップ大学はこう変わる」では、東京大学京都大学の入試の変化を述べ、その理由は大学の国際競争の激化であることを述べます。世界ランキング何位は大学の名誉の問題ではなく、卒業生が就職出来るか否かであることを述べます。今、東大生が東証上場していない会社に断られる時代なのです。

 第4章は「我が子を生き残れるようにするには?」では、人工知能が発達するとどのように社会が来るか、終身雇用が崩れるとどのような社会になるかを述べます。いわゆる士業は生き残れません。今のあこがれの職業の殆どは、トップの人間が生き残れますが、それ以外は生き残れないのです。今の生活モデルは高度成長期に合わせたものです。それが崩れた後には、人と人との繋がりを大事にした1950年代以前の生活モデルに戻す必要があることを述べます。

 第5章は「我が子を守るための戦略」では地方で生きることのメリットを述べます。また、マスコミに踊らされることなく、一人一人が自分なりの幸せモデルを打ち立てれば、非正規雇用の収入では生きられることを述べます。そして、私なりの実現可能なパラダイスを述べます。
そして、「あとがき」には「教員養成系大学の教員として、残念なのですが、私のアドバイスは「教師を信じるな」ということです。」と書きました。

 本書で書いていることは、教師にとってはショッキングなことでしょう。しかし、ちょっと調べれば分かるデータに基づくものです。読めば分かると思いますが、凄く簡単で単純な論理で書いています。そんなことも知らない、知ろうとしない教師を信じてはダメだと書きました。事実、無知で善意な教師のために借金地獄に突き落とされる子どものことも書いています。それらは本来知っているべき高校教師の責任であり、中学校教師が適切な高校を薦められなかったためです。そして、それは小学校教師が保護者に新たな社会の現実を伝えなかった責任です。日本国首相の責任ではなく、教師が無知であったためです。影響力を持つ人の無知は罪なのです。


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次に、西川先生が本書を執筆した理由についてです。
文中の「我が子」とは、西川先生御自身のお子さんのことです。

 この本は、我が子に読ませたいから書いたのです。そして、我が子の学校の先生に読んで欲しいから書いたのです。つまり、自分のために書いた、私としては希な本です。
 アクティブ・ラーニングの本当の姿を知るに従って、とても怖くなりました。私の時代には、この大学に入れば一生涯はまず安泰というようなものがありました。ところが無いのです。日本全体の元気が無くなるとき、「当たり」は無いのです。あるのは、「まあまあ」と「はずれ」と「大外れ」しかありません。
 身近な例です。
 私の息子のお世話になった中学校の卒業生の半数は地域のトップ校に入学します。そして4割の子どもは地域の2番手、3番手の普通科高校に進学します。そして1割弱が地元の職業高校に進学します。今までのモデルならば、「トップ校」>「2番手校」>「3番手校」>>「職業高校」ではないでしょうか?しかし、実際は「トップ校」≑「職業高校」>「2番手校」>「3番手校」なのです。つまり、「職業高校」に進学した生徒はお得な買い物をして、「2番手校」は損な買い物をしたのです。息子の友人に職業高校に進学した子がいます。思いやりのあるしっかりとした子です。私は言葉には言いませんが、「良い選択をしたよ」と思っています。
 しかし、職業高校、そして2番手校、3番手校の子どもも次に選択があります。進路です。私の高校卒業時は大学受験者の3分の1は浪人しました。ところが今は違います。息子の年代の子どもが卒業するときには大学受験者の20分の1しか浪人しないでしょう。今は、職業高校の子ども達もどんどん進学します。が、進学が賢い選択では無いのです。「職業高校」、「2番手校」の子どもは高校卒業時に進路指導部を通して地元の企業に正規採用されること、そして、そこに勤め続けることが正解なのです。ところが、2番手校は就職のパイプが弱い。だから、高校入試に関して「職業高校」>「2番手校」、「3番手校」なのです。
 最近、ある人の弟が不登校になりました。その子は「4番手校」の高校を不登校になりました。私は不登校になったのは正しい選択であること、そして、自分の進路を考え直す機会であることをアドバイスしました。4番手校を卒業しても先は暗いです。少なくとも現状の高校での進路指導の先生の頭の中にあるモデルだったら。おそらく、進学を勧めるでしょう。先に述べたように大学は言葉通り全入の時代です。しかし、大学に進学してもまともに就職出来ず、500万円の借金をサラ金化した学生支援機構からとりたてられることになりますから。
 さて、我が子に対して私が息子に薦めたのは、地域のトップ校に進学し、トップ大学に進学することです。息子には非正規雇用の人の悲惨な生活を書いた本を読ませました。そして、「そうなりたいのか?」と高校入試の間、問い続けたのです。しかし、私のような知識が無い保護者だったら、トップ校が無理だったら、2番手校に進学させるでしょう。それが無理なら3番手校に進学させるでしょう。しかし、それは「大外れ」なのです。おそらく、その子は進学を勧められて上記のような状態になるのです。
 今の日本においての「まあまあ」の道は、トップ大学に入学するか、高校卒業後に地元の企業に正規採用されることです。しかし、トップ大学に入学したとしても、それは「まあまあ」なのです。何故ならば、既に、これからはさらに、企業の寿命が短くなっています。20年で半数の企業は倒産するのです。倒産しなくても終身雇用は崩れているので、40歳、50歳の頃にリストラされます。その頃には、人工知能が中間管理職の仕事を代替わりします。今の花形職業である、医者だって弁護士だって、トップの一部は安泰ですが大多数の人の仕事は取られます。
 じゃあどうするか、人工知能に取られない能力を得なければならないのです。また、リストラになった時、そのキーは学校なのです。ところが、学校教育は人材養成の場では無いとのたまっている人がいる今の学校には任せられません。
 本書で書いていることはショッキングなことだと思います。しかし、全て根拠を明示しています。是非、お子さんにまず読ませて下さい。高校生では遅いくらいです。小学校高学年になったら読ませて下さい。何故なら、高校選択を誤らないためには中学1、2年までにはこれからの社会を理解しなければならないからです。
 もし、お子さんが2番手校、3番手校の普通科高校に進学しているとしたら焦って下さい。大学に入学すればいいんだという幻想を親子とも捨てて下さい。今の高校を卒業したときどのようにすべきかを考えて下さい。
 繰り返します。お子さんに読ませて下さい。
 私は我が子に読ませたいと思って書きました。だから、『学び合い』の「ま」の字も書く余裕が無かったのです。
 さて、我が子を救うにはどうしたらいいでしょうか?それは日本の学校全体が変わらなければならないのです。親が何とかできるのは、進路までです。職に就いてからのことは守れません。それを守れるのは、「今」学んでいる学校を変えるしかないのです。
 自分の文章がろれつが回らない文章であることは十分に理解しています。しかし、私は恐ろしいのです。
 私が何を恐れているのかは読めば分かります。

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以上となります。
高瀬

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