ひとりも見捨てないことを、あきらめない

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アクティブ・ラーニングの授業における課題の作り方 (数と式・方程式)

 最近は、初めてアクティブ・ラーニングや『学び合い』をやろうとしている先生のことを考えて、ブログを書いています。今日のブログは、初めてアクティブ・ラーニングに挑戦する先生に、数と式や方程式の課題の作り方をお伝えするつもりで書いてみます。

 

アクティブ・ラーニングの課題づくりのコツ(その1)
たくさんの問題に挑戦し、学級全体の力をのばす

 アクティブ・ラーニングの手法を用いた授業を成功させるためには、課題の作り方にいくつかのコツがあります。たとえば、「できるだけ多くの問題に挑戦し、すばやく処理できるように、学級全体で練習を繰り返す」という方法があります。これは、正の数・負の数や文字式、方程式などに使えます。もちろん、一斉授業でも家庭学習でも「たくさんの問題を解けば、学力が身につくに決まっている」のですが、ひとりも見捨てずに、全員が多数の問題に挑戦し、かなりの確率で全員が本当に全部の問題をクリアするには、アクティブ・ラーニングの手法を使うしかありません。

 たとえば、2年生の多項式の加法と減法について学習する場合には、次のページのような問題をなるべくたくさん解いて、どのような数式に対しても、的確に処理ができるように練習を繰り返すことになります。また、最初のうちは基本に忠実に考えたり処理していても、次第に簡略化された方法を身につけて、すばやく処理できるようになることを目標にします。

 ※このプリントを実際の授業でコピーして使用してもかまいせん。

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生徒は、先生が教えた方法では、問題を解いてくれない

 もしも一斉授業で、数と式や方程式のような「計算すれば、かならず決まった答えが出る」ように見える問題を扱うとしたら、「これは、こういうふうに計算するんだよ」という解き方を板書するだろうと思います。

 アクティブ・ラーニングの授業では、生徒が自主的に問題に取り組みますので、「いつも自分が教えているような方法で、生徒たちは問題を解くのだろう」と予想しがちです。ところが生徒は、先生が教えた方法と異なる方法で答えを出します。

 これはなぜかというと、教科書に書いてある方法では納得できない生徒がたくさんいるからです。上のような問題を数学の得意な生徒に与えると、教科書の方法でパッと解き終わります。そして、分からなくて悩んでいる生徒に教えに行き、自分が解いた方法と同じ方法で教えようとします。ところが、計算が終わって「わかったかい?」と聞くと「わからない」と言います。

 「え。だって、こうなるじゃん」と言うと、「なんで、そうなるのかが、わからない」と言います。数学が得意な生徒は唖然として、「どうして、こんなアタマリ前のことがわからないんだろう」と考えます。教えてもらっている生徒も真剣なのです。しかし、分からないものは分からないのです。

 そこで止むを得ず、教科書に書いてある方法とは違う方法を自分で考えて教えようとします。このようにして、教室のあちこちで、教科書に書いていない方法によって学び合う場面が生まれます。

 でも、残念ながら「この方法(すなわち教科書に書いてある方法)で分からない、オマエが悪い」というメチャクチャな言い方をする生徒も出てきます。あるいは「教科書に書いているから、これでいいじゃん」と途中で放棄する生徒も出てきます。これでは、「ひとりも見捨てない学習」は成立しません。

 ※このプリント(解答)を実際の授業でコピーして使用してもかまいせん。

 

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最初の「語りかけ」で、学級全体がチームになる

  学級全体がチームになり、「ひとりも見捨てずに学習に取り組もう」と頑張るには、授業の冒頭で次のように語りかける必要があります(これは例ですので、自分なりに変更してください)。

 「今日は、式の計算の問題をやります。いつものように、ひとりも見捨てないようにしてください。私も一生懸命に皆さんのところに手伝いに行きますので、助けて欲しい人がいたら、いつでも声をかけてください。

 皆さんには、問題のプリントと答えのプリントを両方くばりました。答えのプリントは、最初から見てもかまいません。全部の問題を解いていなくても、たとえば1問解いたら1問答えを見るというようにしてもいいです。ただし(1) と(3)と(9)の3問については、「なぜそういう答えになるのか」を2人の人に説明してください。そして説明に納得してもらえたらサインをもらってください(同様のことは板書する)。

 ところで、皆さんのなかで数学が得意な人は、すでにパパッと問題を解いているだろうと思います。◯◯くんと、◯◯くんは、すでに全部解き終わっているんじゃないかな。おそらく、自分が解いた方法で他の人を教えるだろうと思います。でも、そんなに簡単ではありません。苦手な人は、パパッとした方法が分からないのです。たぶん「これでいいよね?。わかったかい?」というと、「わからない」と答えると思います。「わからない」と答えている人に納得してもらえる方法を見つけてください。

 これが、今日の授業の一番大切なところです。つまり、答えは皆さんの目の前のプリントに書いてあります。これ以外の答えはありません。でも、その答えを納得するための方法は、いくつもあります。そして、皆さんの友達にどの方法が合っているのかは、やってみないと分からないのです。

 皆さんは、ひとりも見捨てないで、みんなが問題を解けるようになりたいだろうと思います。しかし、それは簡単ではありません。チャレンジしてもらえますか。私も頑張りますので、一緒に頑張りましょう。では、作業開始です。」

 

数多くの問題に挑戦して、力をのばすような授業のポイント

 数と式、方程式のように、たくさんの問題を解いて力をつけるような課題では、問題の答えはひとつに決まっていますし、効率よく解く方法もひとつに決まっていることが多いです。他の解き方では、手間と時間がかかってしまうことが多いからです。

 しかし、すべての生徒がその方法で納得するとは限りません。さまざまな教え方や説明の仕方が必要になる場合が多くあります。アクティブ・ラーニングの授業では、このことを逆に利用して「ひとつの解き方に満足せずに、さまざまな解き方や考え方を、みずから創りだす」ことを授業で追求することが可能になります。

 そして、以上のような形で授業を進めていけば、「今までの何回かの授業は、皆さんは本当に頑張って、課題をクリアしてきた。今日は、いままでよりも問題数を多くしてみた。ぜひ頑張って、全員クリアにチャレンジしてもらいたい」と投げかけることができようになります。

 なお、もしかすると、あまりにたくさんの解き方が出てきて、収集がつかなくなってしまうかも知れません。そのときには「すごいじゃないか。こんなにたくさんの種類の答えが出てきたのは、初めて見たよ。このクラスはすばらしいなあ。ところで、<ひとりも見捨てない>は、できたかな? そこができるかどうかが、一番の分かれ目だからね。もし、<ひとりも見捨てない>が、できていれば、それでOK。あすもがんばろう」と語りましょう。

 

■ ■ ■ 補 足 ■ ■ ■

今回の資料は、「TeX」(テフ)という組版ソフトを利用して作成しています。「テフ」の歴史は古く、1978年から数学者の間で使われています。今回の資料のうち、解答資料は、次のようなデータから作られています。数字を変更したり、細かい語句を変更してみるとよいでしょう。

TeX は、現在では国際的に最も普及している最新の TeX ディストリビューションとして、「TeX Live」というものがあります。インストールしてみたい方は、次をごらんください。

⇒ TeX Live - TeX Wiki

 

 

\documentclass[b5paper, papersize, 12pt, fleqn ]{jsarticle}
\usepackage[dvipdfmx]{graphicx}
\usepackage{ascmac}
\usepackage{amssymb}

\begin{document}
\begin{center}
{ \Large 多項式の加法と減法 [解答] } \\ \\
\fbox{
\begin{tabular}{l}
多項式多項式の加法や減法のやり方\\ \\
かっこをはずす。\\
それぞれの多項式を単項式にわける。\\
同類項を見つけ、分配法則を用いてまとめる。\\
文字式の書き方(ルール)を守って、答えを書く。
\end{tabular}
}
\end{center}

 \\
次の式を計算しなさい。\\
同類項をまとめて簡単にしなさい。\\ \\
(1) $ \displaystyle 3a + b + 2a = 5a + b $ \\
(2) $ \displaystyle 7x + 3y - 4x - y = 3x + 2y $ \\
(3) $ \displaystyle 6x + 2y + 1 - 6x = 2y + 1 $ \\
(4) $ \displaystyle a^2 - 5a + 3a^2 -4a = 4a^2 - 9a $ \\
(5) $ \displaystyle 2x^2 - x + 3 - 7x^2 + 4x - 3 = -5x^2 + 3x $ \\
 \\ \\
次の計算をしなさい。\\
カッコのはずし方に注意しなさい。\\ \\
(6) $ \displaystyle (a-4b) + (5a+2b) = 6a - 2b $ \\
(7) $ \displaystyle (9a + 4b) - (5a - b) = 4a + 5b $ \\
(8) $ \displaystyle (x^2 - 8x - 7 ) + ( -4x^2 - x + 2 ) = -3x^2 - 9x - 5$ \\
(9) $ \displaystyle (3x^2 + x - 6) - (-4x^2 + 5x) = 7x^2 - 4x - 6 $ \\
(10) $ \displaystyle (2a - 3b) + (4a + 5) + (6b - 3) = 6a + 3b + 2$ \\

\end{document}